若手育成講座 第2回
2019.02.08



こんにちは、あにめたまご広報担当Tです。今日はあにめたまご2019若手育成講座第2回の様子をレポートしていきたいと思います。

この日最初の講義は株式会社テレコムアニメーションフィルム アニメーターの富沢信雄氏を講師に迎えた「伝える演技講座」。この講座では動きの中にあるポーズを見つけ出す手法を学んでいきます。まずは練習用の課題として「男の子が垂直飛びをして壁を叩く」原画を描くことに挑戦した若手アニメーターたち。垂直飛びを表現するために必要な「屈む、ジャンプする、着地」がキーポーズとブレイクダウンになることはすでに第1回の講座を受講した若手アニメーターたちならピンときたはずですが、今回の課題はそのワンランク上にある「伝わる演技」。つまり「屈む、ジャンプする、着地」だけでは原画として不足していると気づかなくてはなりません。それを裏付けるかのように補助講師の竹内氏(あにめたまご2019プロジェクト運営委員会 副委員長)からは「はじめ、中、終わり。まずはその3点のポーズを描いてください。その上ではじめから中、中から終わりの間にある動きを15~20程度描いてみましょう」と指示が飛びます。

これを受けた若手アニメーターたちは机を離れてジャンプをしてみたり、ジャンプしている人の姿を見てはキーポーズとブレイクダウンを探ったりと作業に取り掛かりますが、筆の進みはまちまち。どうやら「垂直飛び」と聞いてもピンと来ない若手アニメーターたちも多かったようで、これが思わぬ苦戦を強いられる要因となっていたのです。講師陣をはじめスタッフも垂直飛びで伝わらないとは思ってもいませんでしたので、これにはジェネレーションギャップを強く感じてしまいました。

苦戦の末に若手アニメーターたちが描き上げたポーズは壁に張り出され講評に移りますが、若手アニメーターの口からは「私、何を描いたのか伝わらないかも……」などの呟きが聞こえてきたように、それぞれの作品を並べてみて初めて気がつくこともあったよう。またそれぞれの絵を見た富沢氏からは「準備動作でその後の動きは決まります。垂直飛びのシーンでは立ち姿、沈み込み、壁を手で叩く、その手が反動で離れる、着地の姿は最低限必要。また重心は常に真下にあることを意識して描くことが重要になってきます」とのアドバイスが送られました。






続けて講義の本題「箱の中に怖いものが入っていた。それを覗き込んでは驚く男の子」のポーズの作成に取り掛かります。富沢氏の口からは「覗き込むというのはどういうこと? 首はどうなってる? 顔は? 姿勢は真っ直ぐ? 驚くと重心はどう移動しますか? バランスは?」など重要ポイントが次々と飛び出します。このヒントを受けてコツをつかんだ人も多かったようで、机を見て回る講師陣から「このポーズはいいね」などポジティブな声も聞かれました。

また描かれた原画は「KOMA KOMA for iPad 」というコマ撮りアニメーションのソフトで撮影され、アニメーションとして見られる形での講評となりました。次々とスクリーンに流されていく「驚く男の子」のアニメーションは若手といえどさすがはアニメーター、いずれも男の子の驚きが伝わってくる作品ばかりでした。最後に富沢氏からは「見せたいポーズを一番大きく描くことがコツです」とのアドバイスで幕となった「伝える演技講座」。この講座を通じて「自らが描いた原画を動画に渡す際の必要最低限のポーズ」が理解できたのではないでしょうか?






昼食休憩を挟んでは第1回の講座にも盛り込まれていた「シアターゲーム」の時間。演劇集団円の女優でもあり、トリッピー表現力教室の代表でもある大門真紀氏を招いて「表現する力を身につける」を主軸に置いた講座は「これからの90分、自分がどのような気持ちで参加するのか目を閉じて自分に問いかけてください」と目的意識を持たせるひとことから開幕しました。

ストレッチで体をほぐした後は、輪になって隣に手拍子を繋いでいくゲームがスタート。これは注意力と調整力を鍛えるトレーニング。ゲームはやがて隣ではなく任意の相手に手拍子を飛ばしていくルールへと変更されると、手拍子を受け取ったと感じた人がふたり以上出てくるなど意思伝達の難しさが浮き彫りとなります。

さらに手拍子もなし、「目があった相手と場所を変える」ゲームとなると手拍子という合図がなくなってしまったために参加者は大混乱。一見すると楽しいレクリエーションの裏には「伝えることの大切さと難しさ」を肌で感じてもらうという狙いがあったのです。





参加者がチームに分かれ、共同作業の上で相手に意思伝達をするというゲームもありました。例えばエア長縄跳びでは2チームに分かれて「見えない長縄飛び」に挑戦。縄ではない何かを回しそれを飛び越えるエア長縄飛びは、相手チームに何を回しているのかが伝わる表現力が試されます。Aチームは「チーズ」、Bチームは「丸太」を回していたのですが、ここで丸太を回していた参加者から「丸太を持ってないのに(実際に持っていたかのように)疲れた……」と感想が漏れたことに対して、大門さんからは「表現者としては満点の演技でした」と最大級の賛辞が送られていました。

個人的に面白かったのが「ありえない水の発売」というお題での擬似ブレスト会議。「食べられる水」「栄養価の高い水」など、どんな意見にも「それ、いいね!」と肯定から入る相づちを義務付けることによって意見を発しやすい土壌が生まれ、それにより次々と面白いアイデアが出てくる好循環は、雰囲気作りの大切さをあらためて教えてくれた瞬間でした。

この講義は最後に大門さんから「90分前に頭に浮かべた決意はどうなりましたか? 皆さんはこの90分前に比べて確実に注意力、集中力、表現力、すべてがアップしているはずです」とのメッセージをもって終了となりました。






続いては瀬谷氏(株式会社手塚プロダクション アニメーター/あにめたまご2019プロジェクト運営委員会 委員長)と株式会社プロダクション・アイジー取締役 アニメーターの後藤隆幸氏による「今だからこそやるべき13のトレーニング」の寸評の時間。今回の課題は「電車の中の風景」でしたが、自分の絵がどのように評価されているのかだけでなく、他人の絵に対するアドバイスにも真剣に耳を傾けメモをとっている参加者が多かったのが印象的。

後藤氏は「みなさん上手なんですが、全体的に逃げているなと印象を受けます。この課題は下手でも、失敗してもいいんです。ただ僕たちは皆さんに挑戦して欲しい」と“挑戦”というワードを何度も使い、若手アニメーターたちを鼓舞していました。

また瀬谷氏からは「絵のうまい下手ではなく、評価する側に思いが伝わることが重要。3Dアニメーションの人の中には鉛筆で絵を描くことに疑問を持っている人もいるかもしれませんが、これは頭の中で絵を描くトレーニングだと思ってやってください」と伝わる絵とは何かを考えさせるアドバイスが送られます。

講評の際には「なぜこの構図になったの?」との質問に対して自分なりの狙いを答えるなど相互の意見交換もあって進んでいった時間は、全参加者の絵が一枚ずつ丁寧に評価され、より伝わる絵が描けるような的確なアドバイスが送られていきます。こうして送られたアドバイスを自分なりに噛み砕き、それを使える技術として身につけることができるか? 「今だからこそやるべき13のトレーニング」は参加者のレベルアップが目に見えるカリキュラム。若手アニメーターたちが今回得た知識を次回の課題にどう反映してくるのかも楽しみなところです。






この日のラストは「アニメーターの仕事」について質疑応答の時間。若手アニメーターが疑問に思っていることを瀬谷氏、後藤氏、そしてあにめたまご2018『えんぎもん』の監督を務めた佐藤広大氏(合同会社スタジオななほし 代表)の3名が答えていく流れで進行していきます。質問は「鉛筆は何Bを使っていますか?」「普段やっている運動は?」など身近な疑問から「絵を早く描くためのコツは?」「若い頃にやっていたトレーニングは?」「いいレイアウトを描くためには?」などの技術面、そして「3Dアニメの現状は?」「中国資本アニメの可否」などアニメ業界の深いところまでさまざまな質問が寄せられていました。






以上の講座をもって「あにめたまご2019 若手育成講座 第2回」は終了。次回の講座をもって若手アニメーター育成プロジェクト2019の若手育成講座は最終回を迎えますが、そのレポートも後日紹介いたしますのでお楽しみに!