若手育成講座 第3回
2019.02.15




こんにちは、あにめたまご広報担当Tです。今回はあにめたまご2019若手育成講座第3回の様子をレポートしていきたいと思います。3か月にわたる若手育成講座も今回が最終日。これまでの講座は原画制作に直結する技術的な講座が開かれてきましたが、第3回となる今回はこれまでの講座の総仕上げ的な講座内容となりました。


オープニングはこれまで提出されてきた「今だからこそやるべき13のトレーニング」の総評となる「トレーニング課題を見る」講座から。この時間は瀬谷新二委員長とスタジオななほし佐藤広大氏からそれぞれの提出課題の寸評がありました。佐藤氏は3DCGアニメーションで活躍しており、2Dアニメーションで活躍してきた瀬谷委員長とはまた違った寸評が聞けたことも若手アニメーターたちにとって収穫になったのではないでしょうか。





3D制作をメインにしているアニメーターは風景などのパースを撮るのは得意ですが、やはり人物を描くのが得意ではない人が多いようで人物の描き方についてのアドバイスが何度も送られます。また、より正確な原画を描くために以前の講座でも学んだ「望遠レンズと広角レンズの画角の違い」を例に出して瀬谷委員長から再度注意も。しかし注意だけでなく成長している部分も見てくれているのが瀬谷委員長。とある参加者の絵に「技術的なことはまだまだですけれど、最初の頃に比べて一枚の絵から伝わってくる生活感やテーマが格段に増えましたね。あなたの進んできた道は間違っていません」とエールを送ったり、他の参加者にも「あなたの絵は最初に比べるとテーマが何であるのか伝わって来るようになりましたよ」と、これまでの作品を時間軸で寸評。


さらに課題に対して独特な世界観を持って挑んでくる参加者に対しては「あなたはいつも独特な絵を描いてきますよね。今回はどんな絵を描いてくるんだろうっていつもドキドキしています。ただ絵は素敵なんだけど課題の意図、習得してもらいたい技術があるので、それを外さないようにしてもらいたい。常に、ギリギリなんですよね」と独特な視点を評価しながらも釘も刺すなど、技術習得に必要なエッセンスが詰まっているのがこの課題なんだと再確認させることも忘れません。


前回の講座でもあった寸評会。技術的なトレーニングがあったわけではないのですが、自分が描いた絵に対して具体的なアドバイスが送られたこの時間は若手アニメーターにとっては実りの多い講座となったのではないでしょうか?






続いてはトムス・エンタテインメント 知財管理部長 笹平直敬氏を招いた「著作権」の講座。ここからはあにめたまごとしては初の試みとなる一般聴講も募りました。
契約の講座に続いての登場となる笹平氏は、アニメーターが最低限知っておきたい著作権の基礎知識から説明していきます。

著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」が定義であって、アイデアやコンセプト、設定、世界観などは、それらが表現に至らない限り著作物とはいえないと説明されます。つまり料理のレシピなどは著作物とは言い難いなど「著作物」「著作権」の大前提を学ぶと、続けて講座はQ&A形式で進行。

「ある漫画のオマージュをした漫画の続編をコミケで販売するのは著作権侵害にあたるのか?」「AIが作成した文学作品や絵画、音楽に著作権が発生するのか?」「ネット上にあった著作権フリーの画像をトレースして使用するのは著作権侵害にあたらない?」「リアル感を出したいので現実にある建物を描き起こしたいが、それを写真としてまたは絵として使用するには各店舗に許可はいるか?」「自分が描いてきたアニメの原画を使って原画展を開いても問題ないか?」など、具体的かつアニメーターにとって身近な例をあげて参加者たちに問いかける笹平氏。これに対して自らの考えを交えながら答える若手アニメーターたちの回答は、総じて、講師の笹平氏から感嘆の声も上がるほどレベルの高いものでした。

さらに講義の終了間際には講座の中で気になった点や、法的にグレーな部分をどう考えるかなど積極的に質問をする姿も見られ、若手アニメーターたちにとっても興味深い講義だったことが伺えました。






昼食休憩を挟んでからは税理士の田子周一氏を迎えた「税金・年金の講座」。毎年開かれるこの税金講座は若手アニメーターたちだけでなく、各プロダクションの中堅、ベテランにも好評で、中には「これまでこれほど税金について学べた機会はなかった」という人もいたほど。意外とあやふやな税金や年金について改めて学べる機会は参加者たちにとって貴重な時間となりそうです。


講座はまずアニメーターたちに身近な「漫画本」や「自宅作業時の家賃」は経費になるかなど具体的な説明からスタート。続けて仮の領収書を使った「領収書の仕分け」という実作業を体験していきます。こうして黙々と領収書の仕分けをしている若手アニメーターたちは、続けて青色申告決算書の作成に取り掛かっていきます。田子氏の説明を聞きながら決算書の空欄を埋めていく参加者たちは真剣そのもの。やはりお金、税金のことは興味があるようです。講座は無事「確定申告書」の作成が完成とともに終了の時間に。フリーランスで働くことも多いアニメーターたちにとってはとてもためになる話が聞けたのではないでしょうか。






最後のプログラムはあにめたまご2019のプロジェクトに参加する4団体の中間報告の時間が設けられ、それぞれが本プロジェクトを通じて手に入れたことを実例を交えて発表していきました。

発表は、株式会社WIT STUDIO、株式会社ケイカ、日本アニメーション株式会社、株式会社Flying Ship Studioの順番で行われ、それぞれの進捗状況や、若手アニメーターがOJTを通じて得たもの、こだわりのポイントなどが発表されていくと、各チームはより刺激を受けていたようです。仲間でありライバルでもある4団体。感じることが多かった時間となったことでしょう。









ちなみに若手から出てきた発言でこのプロジェクトの目的とする部分が確実に伝わっているなというコメントが多くあったので、その一部を紹介しておきます。

●現場の雰囲気について
「指導原画たちと同じ空間にいるので、気になることを気軽に質問しやすい環境がある」

●制作状況について
「今年1月に入社したばかりで右も左もわからない状態だったので、制作の過程のすべてが身になっている」

●ステップアップについて
「普段だったらもらえないような“キービジュアル作成”を任せてもらえたのがいい経験になっている」

●講座の反映
「3Dアニメーションに携わっているのでこれまでキーポーズは描いてこなかった。そのため以前はなんとなくでサムネイルを作成していたが、OJTによりサムネイルを描くようになりとても役に立っている」


このように3度にわたって開催されてきた、「あにめたまご2019若手育成講座」は確実に血となり肉となっているよう。次は2019年3月開催予定の「あにめたまご2019完成披露上映会」。そんな若手たちがどのようなアニメーションを作ってくるのか、今から楽しみでなりません。


【4団体の制作しているアニメーション】

『Hello WeGo!』(株式会社WIT STUDIO)

「メカトロウィーゴ」は子供が乗って操縦できるメカトロボット。
祖母にプレゼントされた古いウィーゴに乗る小学生のサトル。秘密基地に集合したウィーゴ達がレースで飛び出してゆくなか、サトルは初めの一歩を踏み出すことができなかった。そんな彼をクラスメイトのアキラはもう一度レースに誘うが……。
近未来、海辺の田舎町で起こる少年とロボットの物語。


『斗え!スペースアテンダントアオイ』(株式会社ケイカ・株式会社グリオグルーヴ)

宇宙旅行が可能となった未来、ケタケア航空では己の肉体を武器にするハイジャック対策のため、対格闘戦用保安要員としてのスペースアテンダントを採用。

そのひとり武蔵野葵は武術以外はまるで能無しの自称“ドジでノロマでちょっと可愛い亀ちゃん”!?

そしてようやくローカル・ラインからインターステラー(恒星間線)へ配属された矢先、彼女は「ボクの歌は人を不幸にするんだ」と漏らす謎の少年客ライカと知り合うのだが……。


『チャックシメゾウ』(日本アニメーション株式会社)

開いているチャックを見つけたら何でも閉める、チャック妖怪の由緒正しき一家がいた。しかし、現在修行中の息子チャックシメゾウは、未だに一度もチャックを閉めたことがない。

ある日、彼は小銭入れのチャックを閉め忘れて500円玉を落とした少年ひろきと知り合い、二人とも母親が厳しく口やかましいということもあって意気投合。

一緒に家出してひろきのおじいちゃんの家に赴こうとするが、なぜか妹ちえも同行する羽目になり……。


『キャプテン・バル』(株式会社Flying Ship Studio)

とある島で暮らす超貧乏な少年バルが、大金持ちになるため、おんぼろ船に海賊旗を掲げ、仲間の豚プー、妹のムゲ、オオサンショウウオのクーナを加え海賊団を結成!

悪逆非道を尽くし「海賊として成り上がってやるっ!」と意気込むのだが、なぜか毎回良い事をしてしまったり、借金取りにお金を持っていかれたり、そもそも相手にされなかったりと……何もかもがうまくいかないのであった。

果たして、キャプテン・バル海賊団の運命やいかに!?


以上で3ヶ月で計5回にわたる『あにめたまご2019若手育成講座』のレポートは終了となります。皆さま、どうぞ若手アニメーターたちが渾身の力を振り絞って作製したアニメーションを応援してあげてください。そして、次は完成披露上映会でお会いしましょう!