若手育成講座 第1回3日目
2019.02.01



こんにちは、あにめたまご広報担当Tです。3日間連続で開催されたあにめたまご2019若手育成講座第1回もいよいよ最終日となる3日目となります。


この日最初の講座はアニメーション監督の神志那弘志氏(株式会社スタジオ・ライブ 代表取締役)による「レイアウト講座2」からスタート。「演出の求めるレイアウトを描く」を目標に、レイアウト作業を学びます。まずは手慣らしと、「画面の右端に消失点を作って机を左に並べて描いていく」課題に取り組む若手アニメーターたち。しかしこの課題、若手の原画マンがよく陥る間違いをあぶり出す課題でもあったのです。

指示通りに描くと左にいけばいくほど机の角が歪んでしまい(※90度に見えなくなる)絵として違和感が生まれてしまいます。つまり「絵として成立するような補正を入れられたか?」が問われた課題だったのです。この「透視図法的な正確さに囚われすぎず絵として成立するものを描いてください」とのメッセージが込められた課題に最初は見事に引っかかっていた参加者たちも、その主旨を読み取ってからはきちんと修正できていたのはさすがのひとこと。講座に意欲的な姿勢が見て取れます。




続けて美術設定と絵コンテを与えられて、実際にレイアウトを描く作業に移ります。設定でキャラクターの頭身や立ち位置は決まっているので、あとはカメラを置く場所を決めて描き始めるだけ……と思いきや、中にはどこから手をつけていいのか迷い筆が進まない人もちらほら。消失点やアイラインの指定があった最初の課題に比べて、全体的に苦戦している様子がうかがえます。

神志那氏が言うには若手アニメーターはレイアウト作業が苦手で、パースを取れない人が多いそうなのですが、一方で人物を描くのは得意なのだそう。ならば「人物を基準にレイアウトを考えればいいじゃないか」とひとつのアイデアが提示されます。




こうして人物の大きさや距離感からパースを測りそれを基準に考えていくレイアウト作成方法は水があった人も多かったようで、先ほどに比べて遥かに筆の進みが早くなる参加者たち。お昼休憩に入っても神志那氏を捕まえて質問をぶつける姿も見られ、そんな積極的な姿勢からも向上心が伺えました。

昼食休憩を挟んでも神志那氏の講義は続きます。午前中の作業で若手アニメーターが苦戦する姿を見ていた神志那氏は、プロジェクターを使い具体的な説明を交えながらレイアウト作成のお手本を披露。3時間30分にわたる長丁場になりましたが、講座開始時に比べるとレイアウト作成のコツを掴んだ参加者が多かったように思える、実りのある時間でもありました。




続いては三沢伸氏(アニメーション演出家)の「オノマトペで演技を創る」講座の時間。三沢氏は「音と動きには密接な関係にあるんです」と紹介すると、続けて「何もないところから動きを作るよりは、歩くオノマトペ(てくてく)(スタスタ)(とぼとぼ)があれば感情が読み取れるし、タイミングも取れる。今日は実際にそれを尺で測ってみようという講座になります」と講座の主旨を説明します。

各グループに絵コンテが配られると実践開始。「キャッチボールを行うバッテリー」「車から降りて荷物を届ける男性」などの絵コンテから読み取れるオノマトペを考え、その尺をタイムシートに記入していきます。絵コンテにエレベーターを使ったシーンがあったグループは、実際にエレベーターホールに出て確認しにいくなど積極的に動く姿も見られます。頭で考えるのではなく、実践する大切さを講座を通じて学んだからこその行動なのでしょう。

こうして仮のタイムシートが完成したら今度はそれを元に実際に絵コンテの動きを真似る人と、そのタイムを計る人に分かれて計測していきます。しかし各グループが作成したタイムシートと実際に動いてみたときのタイムとではやはり微妙に差異がありオノマトペでの演技表現の難しさを実感していたようですが、それもまた勉強。最後に三沢氏からは「音というのはタイミングを持っていると思うんです。なので動きをつけるときは演出家がどういうシーンにしたいのかを汲み取って、その動きにオノマトペをつけて実際に動いてみてください」とのアドバイスが送られていました。





3日間の長丁場、最後の講義は佐藤好春氏(アニメーター)による「伝えるポーズ」講座。佐藤氏の提示するお題に即したポーズを描いていく時間になります。最初のお題は「大きな重い扉を開けようとして力一杯押しているポーズ」から始まりました。課題を与えられた参加者たちはそれぞれ壁に手をつけてどのようなポーズになるのか試す姿が見受けられます。

こうして出来上がった絵は壁に貼り出されて講評の時間に移るのですが、全員の絵を眺めた佐藤氏は「力の方向性が見えるポーズ(体が斜めになっている)が多く、皆さんお題に沿っていますね」と驚きの様子。「伝えるポーズ」の基本(力の方向と見せ方)を理解している人の多さに手ごたえを感じているようでした。

続いての課題は「両手で抱えないと運べないくらいの大きさの球を持ち上げるポーズ」で、「持ち上げようとしているが持ち上がらない」「ようやく持ち上げて動き出そうとするところ」の2点の描き分け。こちらは実際に大きな球があるわけでもないので実践は難しく、変わりに椅子を持ち上げてみる若手アニメーターの姿もちらほら。講評で佐藤氏が言うにはポイントは持ち上げようとする際の腰の高さだそうで、全体的にもう少し腰を落としてもよさそうですねとのアドバイスがありました。





最後は「疲れ果てて椅子に座ったら、背もたれに寄りかかって眠ってしまった」ポーズ。こちらは「脱力」を描かせる目的の課題だったようで、「肩の様子がポイントです」とのことでした。このように3つの課題に取り組んだ参加者たち。最後に佐藤氏、瀬谷氏と共に講評に参加していた竹内氏からは「描いてもらいたいのはマンガ表現ではなく、(アニメの絵は)日常を誇張した表現なんです。皆さんもよく観察をしてください」と観察の重要性も伝えられました。

こうして3日間の講習を終えた参加者たちは各々に手ごたえを感じている様子。これが次回の「今だからこそやるべき13のトレーニング」やその先にある作品完成の助けになることでしょう。

次回は「あにめたまご2019 若手育成講座 第2回」の様子をレポートしていく予定ですので、その際はまたお付き合いのほどをよろしくお願いいたします!