「あにめたまご2018」オリエンテーション開催
2017.07.25

 
 皆様、はじめまして。あにめたまご広報担当のTです。文化庁委託事業 平成29年度 若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2018」の活動について、今後色々とレポートしていきますので、宜しくお願いします!

早速ですが、「あにめたまご2018」で選定された制作4団体向けのオリエンテーションのレポートをお届けします。
オリエンテーションは、4団体の育成側(監督、プロデューサー等)と、人材育成の対象である若手アニメーター、また、運営側(各委員・事務局)と主催である文化庁が参加し、プロジェクトのポリシーやスケジュールなどを説明し、この事業に関わる全員の認識を統一することを目的としています。

当日は、プロジェクトリーダー石川光久(プロダクション・アイジー代表取締役社長)氏の「(この業界は)人に教えられる人は多いが、人を育てられる人材は少ない。その育成を本プロジェクトでは柱としている。また、後進を育てるためには信頼関係が必要。教える側と教わる側の信頼関係の構築も狙いのひとつ。」との挨拶からスタート。

以降は後藤隆幸(プロダクション・アイジー)人材育成マネージャー、竹内孝次(アニメーションプロデューサー)人材育成委員の司会で進行しました。
「あにめたまごで必ず守るべきこと」「若手原画育成のための実践メモ」など様々なテーマにスポットを当てて話は進んでいきますが、中でも多くの時間が割かれたのが「いかにして若手を育てていくか?」という「あにめたまご」の骨子となる話題。
そこでここからは、今回のオリエンテーションでどのような話題が話し合われていたのか、いくつかピックアップしてご紹介します。


●主役は若手アニメーター
 プロジェクトに携わる4団体からそれぞれ6名以上の若手アニメーターが参加します。その彼らが各作品の原画、3Dアニメーションを担当。そして彼らを支えるのが中堅アニメーターや、指導的アニメーター。こうして実戦を通じて若手アニメーターを鍛えていこうという取り組みが本プロジェクトの核となっています。

この仕組みは当たり前のように見えるかもしれませんが、実際のアニメ制作現場では様々な理由によりこの流れが滞ってしまっているのが現状です。今回のプロジェクトに参加した若手が数年後、十数年後に現場の中心に立ったとき、この経験を活かした人材育成を担っていけるようにとの長期的ビジョンも狙いのひとつです。




●推奨モデルとしての予算を提案
 昨今、アニメ業界の低賃金についてのニュースが話題となっていますが、本プロジェクトでは「業界の賃金、そして労働システムが良い方向に変わって行くよう」、一般的なアニメーション作品の制作費とは異なる、教育と指導等を付加した予算が設定されています。

具体的には各社に制作費として3,800万円が渡されます。もちろん制作費として支給された予算の使用用途は厳密に定められており、各社には報告の義務が課されています。各クリエイターに支払う作業料の最低ラインなども、細かく設けられています。これは「期間中は本プロジェクトに集中できるように」との狙いがあってのこと。国としてアニメーション文化の発展を狙う本プロジェクト。

若手にはただ単に一本のアニメを作るのではなく、このチャンスに多くのものを学んで、後進の育成にも役立てて欲しいとの願いも込められています。


●若手育成プログラム
 プロジェクトに参加する若手アニメーターは、先述の現場での作画作業に加えて、育成担当者にトレーニング課題を提出します。
「今だからこそやるべき13のトレーニング」と題したこのトレーニング課題の内容は、食事の風景、電車の中、町の公園、ファーストフードの店内の風景といったテーマに則した一枚絵を描いて毎週提出するというもの。

これをプロジェクトメンバー全員で見て講評する。この講評会は、ベテラン・中堅・若手クリエイターらのコミュニケーションの場であり、描いた人は絵に込めた意図を説明し、中堅等はそれが他者に十分に伝わったかを講評する。これは絵を見て個人の進歩を促すものであり、絵の上手さを評価するものではない。
そして更に、信頼関係を深める機会を増やすという狙いも込められています。


●「レイアウトチェックシステム」により無駄なやり直しを出さない環境づくり
 制作される4本のアニメーションは「レイアウトチェックシステム」を導入することによって、やり直しを出さない進行を目指します。
これは現在のアニメ制作現場で主流となっている「レイアウトラフ原画システム」を改善していこうという試み。
「レイアウトチェックシステム」は、各人が描いたレイアウトを、監督・作画監督らにチェックをしてもらうことから始まります。

ここで言うレイアウトとは、絵コンテと打合せ内容に沿って担当カットの舞台とカメラアングルを決め、キャラクターのスタートとエンドポジション、そしてそれに伴うポーズを一枚のレイアウト用紙にまとめたものです。このシステムの利点は、若手アニメーターがカットについての理解を段階的に深めていけるところです。
現在主流となっている「レイアウトラフ原画システム」の場合は、上記のほかにラフ原画で殆どの動きを描き、タイムシートも付けます。一見するとラフ原画をそのまま清書すれば原画として使えるので時間短縮にもつながりそうに思えます。しかしここで、演技が適切でない、打合せの意図を反映していない等の理由でやり直しを要求された場合は、ここまでの時間が無駄になると共に、更に同様の時間がかかり、結局膨大な時間がかかってしまいます。

しかし「レイアウトチェックシステム」ではレイアウトで打合せ内容の理解度や完成予想画面の方向性が間違っていないことを確認し、次のステップである演技の詳細を考えることに移行します。この間に監督・作画監督と何回か話し合いを持つことになるため、納得がいくまでカットの理解を深めることができ、描き直しの時間も短時間で済むのです。

また、ここで言う「やり直し」とは、原画本人の理解の間違い、技量の低さから来る不十分さのことです。監督が、演出意図やカメラアングルを打合せ時とは違うものに変えた場合は、原画の責任ではなく、リメイクとして監督が責任を取ることになります。

 他にも、育成担当(監督、中堅アニメーター等)と若手アニメーターは隣同士に近い空間で作業を行うことや、制作の全てを国内で行うこと。また、3DCGでは、手付けでアニメーションをつけることや、アフレコを全編色付きで行うことを義務としていることなど、様々な説明が行われた今回のオリエンテーション。質疑応答の時間もあり、全員が一丸となって本年度の事業を完遂するべく、良いスタートを切りました。
次回は若手アニメーターの具体的な育成プログラムの様子を紹介していきますので、そちらもお楽しみに!


(「あにめたまご2018」制作4団体プロデューサーの方々)

あにめたまご広報担当 T