あにめたまご2018「若手育成講座Ⅱ」
2017.10.02
こんにちは、あにめたまご広報担当Tです!
9月4日に「あにめたまご2018」の若手育成講座Ⅱが開催されましたので、今回はそちらの様子をお届けしていきたいと思います。


最初の講義は、写真家の大和田良氏による写真講座。ここではまず「画角と構図の効果」について学びました。写真とアニメーション、私たち見る側からしてみたら静画と動画は違うと考えがちですが、原画を描くアニメーターにとっては、写真は自らの仕事に近い存在。プロの写真家が語る「画の見え方、見せ方」は大いに勉強になることでしょう。

講座ではまずカメラの基礎を学んだ後、実際に一眼レフカメラを使って24mm(広角域)と85mm(望遠域)で撮影した際の背景と被写体の写り方の違いを体験していきます。背景、被写体、構図は同じなのに望遠と広角で撮られた写真では受け取る印象が全く違ってきます。これは前回の神志那弘志氏の講座で学んだ「カメラ位置と被写体」に通じる考え方です。

休憩をはさんで参加者たちは、「構図が生み出す効果」についても学んでいきます。撮影ポジション+アングルでの印象の違い、線の構図と題して「曲線、垂直、平行、斜め、ボケ、空間」などがどのような印象効果をもたらすのかが大和田氏から語られていくと、これが原画を描く際の考え方にも通ずるとあって参加者たちは興味深い表情で聞き入っていました。

また、このカメラ講座のラストには大和田講師から「顔の向きと逆に空間を広く空け未来への期待を表す写真と、顔の向きに空間を広く空け将来への不安を表す写真を撮ってみてください。」と、普通とは逆の捻った課題が出されました。これでクリエイター心が刺激されたのか、会場は即席の撮影会へと様変わり!? 若手アニメーターたちは一眼レフカメラを片手に窓際、階段、ロビーなどに散り散りになってシャッターを切っていきます。納得のいく写真が撮れるまで何度もポーズや表情を指示していた姿が印象的でした。






午後のカリキュラムは、演劇集団円に所属する女優・大門真紀さんを講師に招き、前回の「若手育成講座Ⅰ」から引き続き、「シアターゲーム2」の講座が行われました。今回のシアターゲームではまず、疑似ブレストや仮想の大岩を持ち上げてみるなどイマジネーションを刺激する体験をして表現力を磨いていきます。

中でも大いに盛り上がったのが、「エア大縄跳び」でした。2班に分かれて行われた「エア大縄跳び」は本当にそこに縄があるかのように、回す人、飛ぶ人が、大縄跳びを熱演。さらにここからステップアップし、「ありえない縄で飛んでいる相手チームを見て、その縄が何なのかを当てる」クイズ合戦に移行。こちらでは一同役者並みの演技力でゲームに取り組んでいました。

このシアターゲームの時間は、情報編集力、つまり自分が感じた事象に対してそれぞれの納得解を導き出すための訓練として設けられたカリキュラムでした。大門さんは「繋げる力」と表現していましたが、感動や興奮などといった感情をうまく表現できることも、クリエイターにとって必要なスキルなのです。


3つ目の講座は後藤隆幸氏、稲村武志氏、瀬口泉さん、瀬谷新二氏の4名のアニメーターが壇上に上がって、事前に募集をしておいた若手アニメーターの質問に答える、「アニメーターの仕事」講座でした。中でも瀬口さんは「あにめたまご」の前身「アニメミライ」で若手アニメーターとして参加していたということもあって、より身近なアドバイスをしていました。

事前に募集しておいた質問は多岐に渡っていましたが、中でも多かった質問が「どうしたら絵がうまくなるか」。これにはまず稲村氏から朝練のススメが提案されます。また瀬口さんからは「描けないことを認識するところから始まる。」とソクラテスの無知の知に近い考え方が提案されました。何が描けないのかが分からないと、上達はしないということでしょう。さらに「自分は、最初はアニメの模写から入ったが、最近は実写や美術書を見て勉強している。アニメの模写ではいざという時に描けないんです。」と実用的な訓練方法が提案されました。



瀬谷氏からは「毎日自分のために何かをする時間をつくりましょう。また例えば映画を見たときには上映途中でも何かを感じたらメモを取ってはそれを整理して感想文のようにまとめます。これは言葉にまとめる能力を養う訓練になります。アニメ業界だけではありませんが、絵だけではどうしようもならないしがらみは当然あります。これを乗り切るためには伝える、言葉にする能力が必要。」と、この日に行なったシアターゲームの狙いに近い提案もありました。

最後に後藤氏からは、先輩の机をよく見る、自分が描いた原画の動画を見る、上がり棚を見るのも上達の近道というお話もありました。

他にも人間関係、ストレスとの付き合い方、解消法、腱鞘炎や腰痛などの病気対策、仕事中の睡魔の対処法、仕事のスピードを上げる方法など様々な質問に答えていく登壇者4名。最後にそれぞれから
「職場は自分たちが作っていくもの。萎縮しないで上と話をしてみてください。」、「自分の描いた絵を見せて周りの人に意見を聞くのも大事。周りとたくさんコミュニケーションをとってみてください。」、「教わり上手になってください。先輩たちも手ごたえのある後輩に教えたいと思うでしょう。」、「教えてもらっていることが10だと思わないように。指導はしますが、そこで全部は教えきれない。せいぜい2割か3割です。足りない部分を自分で探すことが大事です。」とのアドバイスを残して、このコマは終了となりました。

若手育成講座Ⅱの最後は、「今だからこそやるべき13のトレーニング」の総評です。この「今だからこそやるべき13のトレーニング」は、1週間ごとに決められたテーマに沿った絵を描いては提出していく育成トレーニングで、この日までに4つの課題が出題されていました。その課題についての総評があり、講師陣からは「テーマが何を描かせようとしているのかを感じ取ってください。」「(3Dをメインにやっている人などもいますが)描けない人なりの工夫が見たい。」「それぞれの若手が抱えている問題を各会社の指導者たちは指摘してあげてください。」と、若手アニメーターだけでなく指導者側にも厳しい言葉が飛んでいたのが印象的でした。



さて8月からはじまった若手育成講座もいよいよ残りは10月の1回のみとなりました。すでに各スタジオで作品制作は始まっていますが、参加者たちにはこの講座からも多くのことを学んでいってもらいたいですね! ということで、次回は若手育成講座最後の様子を紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。