「あにめたまご2020」若手育成講座第2回1日目開催
皆様、こんにちは!あにめたまご広報担当のKです。
平成31年度 文化庁委託事業 若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2020」若手育成講座の第2回、1日目の講座を9月18日に実施しましたのでご報告いたします。


■講座1「レイアウト講座1」

この日は瀬谷新二プロジェクト運営副委員長のレイアウト講座からスタート。瀬谷氏はまず「構図は使うレンズによって変わってきます」と、人間の目に近い標準レンズ、画角の広い広角レンズ、そして画角が12°ほどの望遠レンズの3つのレンズの違いを説明。さらに同じ場所から異なったレンズで撮影したらどのような絵になるのかというお手本を「本来ならこのようにはならない、嘘の絵です」と参考資料を添えて説明を行い、続けて「では実際にどのような絵になるのか?」と正解を考えさせます。

さらに映画『ジョーズ』でも使われた手法で「望遠レンズから広角レンズへズームしていくのに、人物の大きさが変わらない」という見せ方もスライドを使って紹介。この手法は「ドリー・ズーム」と呼ばれる映画界では有名な撮影方法で、見る者に不気味さを与える映像に仕上がるのが特徴なのだそう。これを自作の動画を使って説明すると、参加者の理解はより深まったようでした。

レンズ効果の説明が終わると、次はアイレベルの説明に移ります。アイレベルとはカメラ(目線)の高さを示す言葉。瀬谷氏は椅子の絵を用意し、椅子の中心と同じ高さから見た像を描かせます。若手アニメーターたちはすらすらと筆を進めていきますが、続けてカメラが上昇したら? カメラが下を向いたら? さらにそこから上昇したら? 下がったら? 俯瞰になったら? など出題が進むにつれて、筆の進みは鈍っていき……。

そんな若手アニメーターたちをサポートするように、瀬谷副委員長や、同じく副委員長の後藤隆幸氏が各テーブルを回って考え方を示したりアドバイスを送っていきます。こうしてアニメ業界の先駆者たちから貴重な助言がもらえるのもあにめたまごの特徴。普段であればベテランからアドバイスを受ける機会の少ない若手アニメーターたちは、積極的に二人を捕まえては質問を投げかけていきます。
最後に、机を前にして椅子に腰掛けている社長の姿を望遠、標準、広角の3レンズで描き分けをさせることで総仕上げ。こうして実りの多いレイアウト講座は時間となりました。


■講座2「写真講座」

午後の講座は午前に学んだ知識やイメージを実地で体験していく時間になりました。講師に写真家の大和田良氏を迎え、一眼レフカメラを使った望遠と広角の違いを学んでいきます。

講座に協力頂いている株式会社ニコンイメージングジャパンから一人一台のカメラが貸し出されると、誰が撮ったのかがわかるようにネームプレートの撮影からスタートするのですが、カメラに慣れない参加者たちが恐る恐る撮影している様子は毎年のことながら微笑ましい光景です。

大和田講師はまずカメラを使うための基本知識を説明。これが終わると広角、標準、望遠レンズで撮った写真を見ながら、その効果の解説に移ります。そしていよいよ実践の時間。若手アニメーターたちは壁に張り出されたポスターの前に人形を置き、その人形の大きさを変えないように広角レンズと望遠レンズで撮り分けをしていきます。これはちょうど午前の講座で学んだことの実地体験にもなっています。楽しそうにシャッターを切る若手アニメーターたちは休憩時間になってもカメラをいじっている人も多く、頭で考えるのではなく実際に体験することで得るものがあったのでしょう。

後半は「構図の考え方」の座学がありました。構図とは画の単純化と主題の強調、そして印象や雰囲気の強調をするためのもので、この構図の考え方はカメラが登場する前の絵画の時代からあったそうです。座学では続けてアイレベルの説明がありましたが、ここでは「満員電車に乗っていても、160cmの人から見える世界と、190cmの人から見える世界は全然違いますよね」と身近な例えを交えて分かりやすい説明となっていました。

そこから対象物の形状によっても画面から受ける印象が変わってくるという話に続きます。曲線の構図は優美さや複雑さを彷彿とさせ、直線の構図は力強さや安定感を感じさせる。三角形の構図はビジュアルに強く訴える力があるので広告やファッション誌でよく使われ、斜めの構図は人間の目には不自然な構図なので不穏を感じさせるなど具体的な効果が紹介されると、大和田講師から次の2つの課題が課せられます。

課題1:顔の向きと逆の空間を広く空け「未来への期待」を表す写真を撮る。
課題2:顔の向きに空間を広く空け「将来への不安」を表す写真を撮る。

これを受けた若手アニメーターたちは先ほど支給されたカメラを手に班ごとに分かれて撮影準備を開始。課題に沿った写真を撮りに教室の外へと繰り出していきます。そして1時間の撮影時間を経て教室へと戻って来た面々は、各班で最も課題に沿うであろう一枚を提出。A班、B班、C班、D班の順で講評をいただきました。

それぞれの良い点、改善点を指摘する大和田講師の言葉に聞き入る若手アニメーターたちは、自分たちの構図にどんな評価が下るのか気になる様子です。それもそのはず、確かに今回は写真という一見畑違いでの課題でしたが、構図という点で考えるとそれはアニメーション制作にも直結する課題だとわかっているから。午前の瀬谷副委員長の講座、そしてこの大和田講師の講座を通じて構図に関して手応えを感じた人も多かったのではないでしょうか。

■講座3「今だからこそやるべき11のトレーニングを見る」

この日最後の講座は瀬谷副委員長、後藤副委員長、そして今西隆志委員による「今だからこそやるべき11のトレーニング」の講評会となりました。限られた時間の中で一人一人のトレーニング成果を評価していく3氏。それを受けた参加者たちは自分の課題だけでなく、他人のトレーニングの課題に寄せられる意見にも耳を傾けます。

この「今だからこそやるべき11のトレーニング」は初期と終盤では完成度に格段の成長が見られるのが通例。今回は序盤のトレーニング課題の講評会ということで、3氏からは基礎的なアドバイスが多かったように感じましたが、終盤になればよりテクニカルなアドバイスが送られることになるでしょう。

以上のとおり、この日の講座は構図とレイアウトを中心に学びました。次回は「伝える」をテーマにした「あにめたまご2020」若手育成講座2回目2日目の様子をレポートしていきますのでよろしくお願いします。
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