「あにめたまご2020」若手育成講座第3回2日目開催
皆様、こんにちは!あにめたまご広報担当のKです。
平成31年度 文化庁委託事業 若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2020」若手育成講座の第3回、2日目の講座を10月30日に実施いたしましたのでご報告いたします。


■成果発表

「あにめたまご2020」若手育成講座の最終日となるこの日は、現時点での作品の成果発表からスタートします。各制作団体のプロデューサーから制作目標の発表があった後、実際に作業をしている若手アニメーター3名が、ここまでの作業内容とそれぞれの思いを発表していきます。簡単ではありますが各団体の発表をまとめました。

【株式会社スピード】
作品タイトル:「オメテオトル≠HERO」


森田プロデューサーの成果発表コメント
今回の作業を通じて若手アニメーターたちには意識と技術の底上げを目指してほしいですし、そのためにそれぞれにシーンを割り振り、責任を持って作業にあたってもらっています。技術的な面では特に3DCGアニメーションでモーションをつける作業にあたって、キャラクターとしての動き、シーンを理解した動き、カメラを意識した動きなどを理解して正しいプランを立ててほしいです。

若手アニメーター:桑村さんの成果発表コメント
入社1年目で3DCGで2Dを作るのも初めての経験でした。最初の目標はソフトの使い方を覚えることから。任された作業やおばあちゃんのモデリングで、最初にキャラクター表を見たときに独特なその髪型をどう描いていいのか悩みました。

若手アニメーター:河村さんの成果発表コメント
ひとつでも多くの知識を取り入れたい、そしてそれを活かしていきたいとの思いで「あにめたまご2020」に参加しました。3Dでキャラクターを作る際に難しいのは、正面から見て綺麗に見えても横から、斜めから見たら歪になっていることもあって、その調整が難しいですね。例えば顎の形。正面から見ると綺麗なのに、横から見たら歪(いびつ)になっていたりして、そこはデザインをした人に聞きながら作業しています。

若手アニメーター:桑田さんの成果発表コメント
「あにめたまご2020」に参加した理由はまず作業に自信をつけたかったから。人に伝わる画力を得たかったし、何よりひとつの作品を最初から最後までやりきるという貴重な経験だと思ったからです。僕がやっている制作作業は主人公の部屋や街づくり、そしてアニマティックスになります。劇中の街は一から作る必要があったので地図を作って演技に矛盾が出ないようにしています。またアニマティックスとはコンテを元に作る仮のレイアウトとアニメーションのことですが、こちらは現在ヒロインがドローンから逃げるシーンを作っています。

【ベガ・エンタテイメント】
作品タイトル:「レベッカ」


安本プロデューサーの成果発表コメント
今回の作品は日常シーンが多く動画も1万枚超えになりますので、若手アニメーターたちには思う存分キャラクターを動かしてほしい。そしてこの「あにめたまご2020」の講座や課題を通じて、カメラ位置をはじめとして自分がこれまで間違っていた、勘違いしていたところに気づいて成長してほしい。社内で開いている講評会では最初はみんな腰が引けていたが、回を重ねるごとに議論も活発になり積極性が芽生えてきたように感じられます。

若手アニメーター:高橋さんの成果発表コメント
私は人物に生命力が感じられるような豊かな表現を担当カットで描けるようになりたいと意気込みを持って「あにめたまご2020」の講座に臨んでいました。そして実際にトレーニング課題やレイアウト作業のやりとりで、じっくりと自分の絵を取り上げていただくことによって、朧気だった苦手意識や欠点が明瞭になりました。これは収穫だと思います。また評価していただいたこともあって、それは自信になりました。将来の目標ですが、まずは苦手意識や欠点を克服していきたいと思います。

若手アニメーター:滝澤さんの成果発表コメント
アニメーターとしてあやふやでやっちゃっている作業が多くて、知識量、技術が足りないのは認識していました。なのでこの「あにめたまご2020」ではそれを克服したいという目標を持っています。現在はラフ原作業に入っているんですが、講座で講師の方から教わったことがとても役に立っています。例えば神志那さんの「演出家が求めるレイアウトを描く」講座で教わったことがとても大きくて、寝かせていたラフ原が描けました。将来は難しくて諦めていたカット、避けていたカットに挑戦していけるようなアニメーターになっていきます

若手アニメーター:濱田さんの成果発表コメント
参加当初はカメラの位置などは分からなくて、それでいて先輩方には聞きに行けずネットで調べたりしてたところが「あにめたまご2020」の講座で理解できました。それを今度は自分の知識として落とし込めるようにしていきたいです。またリテイクに関してもこれまでは文字での修正説明でしたが、今回は例えば監督から直接絵を添えながら説明してもらえるのが大きかった。これまでは監督や作画監督に疑問点を聞きに行くことができなかったけれど、聞きに行ける土壌ができたことが大きくて、これは続けていきたいと思っていますし、私が成長したら後輩の子に聞きに来てもらえる環境を作っていきたいです。

【ゆめ太カンパニー】
作品タイトル:「みちるレスキュー!」


天野プロデューサーの成果発表コメント
チームでひとつの作品を作る中で個々が自分の役割を把握し、ひとつの目標に向かって作品を制作するという経験は何にも代えがたい大きな財産です。自分がやってる作業がどういったところになるのかなど、具体的に自分が作業した部分を把握しながら作品を作ってもらいたい。またOJTでは自分だけでなく他者に目を向ける視点を養ってほしいですね。ちなみに今回の作品には多くのアニメーターが苦手とする動物の描写を取り入れてみました。

若手アニメーター:保達さんの成果発表コメント
私はレイアウトに自信がなくて少しでも自信がつけられるようにとプロジェクトん参加しましたが、トレーニング課題を通じて手を抜いたのはすぐにバレてしまいました。そこからは逃げずに全力で取り組んできたつもりなので、少しは力がついたかなと感じています。また今回の「みちるレスキュー!」でも苦手だった室内レイアウトに丁寧に修正を入れてもらえて勉強になっています。撮影の打ち合わせに参加したり、アニメができるまでの流れをより近くで経験できたことが大きな財産です。

若手アニメーター:陳さんの成果発表コメント
私の課題はキャラの動きを自然に見えるように描くことだと思っていました。それからキャラのパースと背景のパースを合わせること。他にも絵のおかしな部分を自分で見つけられる力をつけたいです。将来は原画としてはコンテから演出の意図をくみ取り、レイアウトを描けるようになりたいし、演出を目指して撮影などいろいろな経験を積んでいきたい。そのためにはまずキャラクターの感情を表現できるようになります。個人的にキャラが活き活きしている作品が大好きだから、体の動き、そして動きのタイミングでキャラクターの感情を表現をできる演出になりたいです。

若手アニメーター:王さんの成果発表コメント
日本のアニメを経験したくてアニメ会社に入りました。そして今回の「あにめたまご2020」では納得ができる原画を描けるようになりたいと思って参加しました。私はキャラクターがパースに乗っていないと言われることが多いので、まずはそれを克服することから始めました。最初は広角レンズの画角と言われても意味がわからなかったんですが、講座を通じて理解 できました! ただ、理解するのと描けるようになるのは……別の話ですが(笑)。また、キャラクターのポーズに関しては、皆さんのトレーニングを見て画力だけでなく人物のドラマ性なども、もっと勉強していかないといけないなと刺激を受けました。

■絵コンテ講座


これまでの総仕上げ的なカリキュラムとなった「絵コンテ講座」は事前に用意した6本のショートストーリーの中からグループごとに一本を決めて、監督を立て、時間内にアニメーションを作り上げていくというアニメーション作成の過程を学ぶ時間となりました。

作業にあたって瀬谷副委員長は「脚本を決めたら監督を決める。シーンは分割して各メンバーが絵コンテに起こしていく。BGMは1曲だけ使えます。この講座ははっきり言って無謀ですが、絵コンテの流れを勉強していく時間として頑張ってみてください。何か衝突が起きたら私(瀬谷)、後藤副委員長、森田委員がアドバイスをしますので、何とかして6時間で撮影を終わらせて、作品を完成させてください」と檄を飛ばします

これを受けて話し合いを開始する若手アニメーターたちは脚本選び、BGM決定、監督決めと手際よく作業を進めていきます。活き活きと意見を交わす参加者たち。やはりアニメーション作成に関わっている時間はみんな活き活きとしています。

さらに実作業に入る前に、瀬谷副委員長から下記の注意事項が告げられます。

【アニメーション作りに際しての注意事項】
1.男の子(主人公)の性格を決める。
2.キービジュアルを共有する。
3.パート割りを決める。
4.足りない素材はその都度共有。
※カメラワークは使えないので全て手描きで対応する
※レイヤー分けは可能

1に関しては元気な男の子なのか、真面目な子なのか? その設定如何によっては動きや反応が変わってきますのでこれを最初に決めないとならないわけです。また2に関しては例えば作品「ケーキ」が出てくるとして、その大きさや形の共有ができてないと場面によってバラバラになって統一感がなくなってしまいます。さらにアニメの現場では可能なカメラワーク(ズームなど)は今回は使用できませんので必要ならば手描きで対応してくださいとの注意がありました。

完成予定の作品は1~2分ほどのショートアニメなのですが、それでもこれだけの決め事があるのです。これまでキャラクター表やキービジュアルがある状態で作業を始めていた若手アニメーターたちにとって、初めて経験する作業もあるでしょう。短いとはいえ制作作業を始めから追っていくこの時間は、彼らにとってとてもいい経験になりそうです。

またラフコンテ作りに際しては以下のような注意点が提示されています。

【ラフコンテに際しての注意事項】
1.カットとカットのつながり(ポーズや位置関係)を統一する。
2.同じアングルサイズで繋げない。
3.イマジナリーラインを超えない。

1に関してはこの統一がなされていなければアニメーションとしてのつながりが取れなくなるので当然ですね。3のイマジナリーラインというのはカメラ位置の問題。これはアニメーションや映像撮影での約束事であり、あえて外す演出もあるのですが、今回は統一してくださいという注意点です。

これらを守りながら若手アニメーターたちはラフコンテの作成に取り掛かります。そして完成したラフコンテは床に並べて(ショートアニメといえども、20~30枚。1枚の用紙に2カット描いていますので、40~60カットになりますので机には乗り切らないのです!)瀬谷副委員長、後藤副委員長、森田委員のチェックが入ります。「このシーンは1カットにまとめた方が良さそうだよね?」「木の大きさと果物の大きさの対比は事前に作っておかないと描けないよね?」などのアドバイスを真剣な眼差しで聞く参加者たち。


実作業は2~3分のショートフィルムを作成するために、1人3カットを担当するとして、1カットにつき10枚前後の動画となるはずなので合計30枚。それを5人で分担するので150枚前後の作業となるのですが、これは通常のアニメーション作成の現場でも無茶なタイムスケジュール。瀬谷副委員長が最初に「無茶振りですが」といった理由がここにあります。しかし限られた時間で作業を仕上げるという挑戦はある意味大きなトレーニングになることでしょう。最初は楽しそうにアニメーションの方向性を話し合っていた参加者たちから徐々に口数が減っていきます。

12時からスタートした作業は、1時間の昼食休憩を挟んで黙々と続きます。17時を回ったころには撮影をする参加者の姿もちらほら出てきましたが、まだまだ作画作業に没頭しているメンバーが大半。ちなみに撮影開始の予定目安は17時10分に設定されていますが……遅れています。さらに予定時間の18時10分を迎えても撮影が終わる気配はありません。どれだけ大変な作業なのかはそばで見ていても感じます。

瀬谷委員長を初めとする指導者たちから急かされて動画の撮影を終えた若手アニメーターたちは作成したアニメーションの撮影をなんとか終わらせ、お楽しみの上映会がスタート。それぞれショートフィルムながらもしっかりと仕上げてきて、さすがは若手といえでもプロの集団なのだと感心させられます。中でも個人的に驚いたのがBGMの存在でした。コミカルなシーンにも関わらずそこに被さるBGMが仰々しいチームもあったのですが、思わず「平和な日常シーンに見えるけど、何かとんでもないことが起こっているのでは!?」と錯覚させられたというか……。もちろん参加者たちも絵やカメラワークだけでなく、BGMの大切さも身を持って体験したことでしょう。


さて、これにて「あにめたまご2020」若手育成講座の全日程が終了となりました。この講座で学んだ知識を活かして、アニメーション制作へと進んでいったのでした。そんな若手アニメーターが描いた原画や、3作品の場面写・美術設定が見られる完成披露特別展示を特設ページにて行っております!! 是非、この機会にご視聴ください!

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