「あにめたまご2020」若手育成講座第3回1日目開催
皆様、こんにちは!あにめたまご広報担当のKです。
平成31年度 文化庁委託事業 若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2020」若手育成講座の第3回、1日目の講座を10月25日に実施いたしましたのでご報告いたします。


■税金・年金の講座

この日のカリキュラムは税理士の田子周一先生を迎えて確定申告についての勉強会からスタートです。今年は会社に所属する若手アニメーターたちが多いこともあり、青色申告決算書の作成だけでなく、年末調整の源泉の見方も合わせて解説。幅広い税制講座になりました。

事前にサンプルの領収書と確定申告書のコピーを手渡されていた参加者たちですが、これまで気にしなかったであろう領収書の仕分けから四苦八苦。それでも田子先生の指示のもとに配られた用紙に数字を記入していき、源泉徴収票や年末調整の見方、医療費控除の仕組み、そして経費として計上できる領収書とできない領収書の選別などを通じて社会人としての知識を蓄えていきます。

こうして田子先生の指導によって完成した確定申告用紙から還付金がはじき出されると「きっちりと確定申告をするとこれだけの金額が返ってくるんだ」と感心する若手アニメーターたち。中にはフリーランスの参加者もいましたが、今年度の確定申告に向けて大いに役立つ講座だったのではないでしょうか?


■著作権・契約の講座

午後の講座は株式会社トムス・エンタテインメント知財管理部長の笹平直敬氏による「著作権・契約の講座」からスタート。アニメーション業界に身を置く者にとって重要な知識を学べるまたとないチャンス。若手アニメーターたちにとってはやや難しい話であり、昼食休憩直後ということもあって、若手アニメーターたちは睡魔と戦いながら、受講していきます。

まず笹平さんは「契約」という行為について身近な例をあげながら説明していきます。「コンビニに行ってレジでお金を払い、おにぎりを買いました。これは契約になりますか?」「友達と『また後で連絡するね』と言って別れたのに、連絡をしなかった。これは契約違反ですか?」ちなみにコンビニでのやりとりは契約。友達とのやりとりに関しては契約とはいえない。

契約の定義とは「二人以上の当事者の意思表示の合致により成立。原則として口頭でも成立する」です。契約と約束の違いは違反したら国家の力(裁判所など)を借りてでも強制的に相手に履行させることができるか否かの違い。つまり契約とは明確な、固い、法的拘束力を持つ約束といえます。

そしてこの契約の強固な証拠となるのが契約書。笹平さんは、サンプルの契約書をもとに契約のあり方を解説していきます。どこまでの内容を記述するか、何を記述すべきかを説明していきますが、裏を返せば契約書に書かれた文章をどう解釈すればよいのか、どんな部分を見落としてはいけないのかを説明してくれていると同義。こういった説明は大いに勉強になります。


さらに講座の後半は著作権についての講座がありました。アニメーション業界に身を置く者としては著作権は学んでおかなければならない重要なファクター。どんなものが著作物に当たるのか? 制作したアニメーションの著作権は誰に帰属するのか? そもそも著作権とは音楽、小説、絵画、映画等の作品が創作的表現物と認められる場合、それらに自動的に発生し、それらを他人に無断で利用されない権利のこと。著作権はいつ発生し、いつまで保護されるのか、またコピーライト表示(いわゆる(C)表示)とはどのような意味があるかなどなど、この時間は知っていそうで知らなかった部分を学ぶ絶好の機会となったことでしょう。

また、アニメーターにとって身近なところで覚えておきたい法人著作(=職務著作、著作権法15条)の解説もありました。法人著作には5つの要件があり、それは「法人等の発意に基づくこと」「法人等の業務に従事する者が創作すること」「職務上の行為として創作されること」「法人等の著作名義で公表されるものであること」「契約、就業規則等に別段の定めのないこと」。これら全てを満たす場合は個人が創作した著作物でも原始的に法人(会社)が著作権を持つことになるということなのです。

具体的には自分自身が描いた絵が使われているアニメーションでも、それが会社の指揮・監督のもとに行われた業務の成果物である以上、著作権は自分自身ではなく会社に帰属するということになります。これらをしっかりと理解しておかないと会社や取引先との間で無用なトラブルを生む原因にもなりますので、ここで勉強できたこ とは必ずや役に立つはずです。

さらにアニメーション制作の際に注意しておかないといけないのが著作権の侵害についての正しい理解。こちらに関しては「著名な絵画や写真を部分的に使用することは著作権侵害になるか?」「実際にある建物を写真に撮ってそれをトレースすることは著作権侵害になるか?」「有名寺社をそのままの名前で使うのは?」「自分が描いたアニメ原画を自分のホームページにポートフォリオとして掲載するのは?」などより具体的な例をあげ、Q&A方式での解説となりました。個々の事例に関しての解説はここでは省きますが、アニメーターたる者、他人の著作物もリスペクトしなければならないという意識が浸透したことは間違いなさそうです。

■表現する講座


午後2コマ目の講座はアニメーターの稲村武志氏による「表現する講座」。この講座は見た人に伝わる演技を学ぶ時間。どう動かせば描いたものが意図したものに見えるのか、これを考える講座です。自分の人生経験を思い出して想像して伝わるように工夫して表現することが必要だと伝えた稲村さんは、さらに「驚く」という感情表現ひとつとっても様々な形があると紹介していきます。同じ表情であっても、僅かな動きの違いでも驚きの質が変わること、視線や体の動きひとつで状況や性格が表現できることを実際に用意した動画を使って分かりやすく解説してくれました。最後に「アニメーションの動きは思ったより多くのことが伝わることを覚えていてください」と常に伝える絵を意識しながら作画作業をしてくださいとエールを送って表現する講座は幕を閉じました。

「あにめたまご2020」若手育成講座は最終日を残すのみとなりました。
そちらも後日レポートをお届けしますので、よろしくお願いいたします。
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