平野 岩田君とは子役時代の児童劇団が一緒なもので、どことなく同窓生みたいな感覚なんですよ。
岩田 僕は緊張します!(笑)
平野 声優同士としては劇場版『うる星やつら3リメンバー・マイ・ラブ』(85)がでゲストキャラ「ルウ」を演っていただいたとき最初かな。『AKIRA』(88)の主人公「金田正太郎」をなさったのはその後?
岩田 はい。『うる星やつら3』が高校2年生くらいのときで、その3年後に『AKIRA』でした。
平野 『AKIRA』って今の未来的なSFものの走りですよね。
岩田 でも時代設定は今年、2020年なんですよ(笑)。
平野 その2020年に、何とこうやって《あにめたまご》のMCとしてご一緒することになりました(笑)。
岩田 ますます緊張します(笑)。でも光栄です!
平野 私は2019年度の《あにめたまご》の『チャックしめぞう』にしめぞうのママ役で出させていただいていたので《あにめたまご》 の存在は知っていましたけど、岩田君は?
岩田 実は《あにめたまご》と聞かされてすぐに認識できなかったのですが、その前に《アニメミライ》などの名称を用いながら若手アニメーターの育成プロジェクがずっと行われているというのはうかがっていましたので、今回そこに自分も司会として参加させてもらえて、しかもお相手が平野さんだとお聞きして、もうすごく嬉しくて!今日こうしてお会いするのも久しぶりですし、この齢でいうのもアレですけど、成長した僕を見ていただけるかなと(笑)。
平野 (笑)私は『チャックシメゾウ』のアフレコのとき「本当 にこれを新人アニメーターの方々が描いたの!?」と、そのクオリティの高さに驚いたんです。《あにめたまご》 は作品制作における最低条件のひとつとして「アフレコ時にはすべて絵が上がっていること」を掲げていて、それ自体最近はほとんどないことですけど、あのときは声優さん同士で久々に“お芝居”ができたんですよ。 つまり絵に対して単に技術的に対処するのではなく、 縦(絵)に対しても横(共演者)に対してもお芝居ができてすごく楽しかったですし、「アニメって本来こうだったよね」と思い出すことができました。しかもそれが文化事業として成されていることを知って、ずっと続けていってもらいたいなあと痛感させられましたね。 |
岩田 最近の若い声優は絵に色まであると、逆に戸惑うみたいですね。
平野 そう、お芝居できなくなっちゃうっていう感じなのかな。今はモニターのラフ絵画面の上にタイム表示やカット番号が出てくるので、相手のセリフを聞いてではなく、そのタイミングで自分のセリフを出して完結しちゃっているように感じることがありますね。
岩田 本末転倒ではありますけど、本来は絵に合わせて、それこそオフで見えないところまでイメージしながらやっていくものだったのですが、今は絵合わせ職人みたいな若手が多くなってきている。いや、違うでしょ。合わせるのは当たり前のことで、その先にある芝居を目指さないといけないんですよと。
平野 絵と一体感になってのお芝居って、とても楽しいんですよ。自分は画面しか見ていないのだけれど、横とのコンタクトが、相手のセリフからちゃんと伝わってくるんですよね。
岩田 今の環境だとなかなかそれを伝えることは難しいのですが、ちゃんと絵があれば芝居せざるを得なくも なりますし、年に数本でもいいからそういう作品があるとありがたいですね。
平野 『チャックシメゾウ』は試写会で若手アニメーターの方々の姿も、お見かけしたのですが、本当はお話もしたかったんですね。アニメーターと声優ってなかなか接点がないので、作品の打ち上げとかには努めて行くようにしているんです。そうするとどんな人たちが絵を描いてくれたのかなというのがわかりますし、私のほうから話しかけることもあるんですよ。逆にアニメーターさんのほうからも、こちらに踏み込んでいろいろ聞いてきてほしいなと思ったりしています。
岩田 実は僕も打ち上げなどにはなるべく参加する ようにしているんです。現場のスタッフと声優 の交流って、本当はもっともっと成されるべきですよね。アニメーション制作の中で、声優って一番おいしいところをいただけちゃうんですよ。でもその後ろには作画から背景から、 いろいろなスタッフのご苦労があることを忘れてはいけない。初めて打ち上げに参加させていただいたとき、本当に驚いたんですよ。こんなに大勢の人たちが関わっていて、僕らはこの人たちに支えられてるんだって、意識がそこで大きく変わりましたし、実は同じことがアニメーターさんたちにも言えるかもしれない。 |
平野 これは『うる星やつら』のときですけど、毎週毎週のアフレコで上がってきた絵を見て「こんなすごいギャグをやってるの!?」なんて驚きながらも、こちらも絵に負けないように一所懸命演技して、すると次の週はまたさらに違った面白いことが描かれている(笑)。アニメーターと声優の直接の接点こそな かったのですが、ちゃんとキャッチボールができていたような感覚が確実にありました。それは本当に楽しかったですし、《あにめたまご》に携わったアニメーターや声優さんたちも、そういった感覚を養ってい ただけたら嬉しいですよね。
岩田 かつてアニメーションってサブカルチャーだったような気がしているんですけど、今は完全にカルチャーであり、クール・ジャパンのクールの中にも取り込まれている。その意味でも市民権を得てきているのかなと感じますし、そこに対する誇りを声優もアニメーターも含めてアニメーションに関わっている人たち が持てるようになってきている気がしますね。自分たちは胸を張って文化を担ってるんだ!と。
平野 私たちはもう社会貢献しないといけない世代になってきています。自分たちが先輩の皆様方から教わったことも 惜しみなく若い世代に伝えていかなければと思っています。
岩田 その意味では現在の声優業界ってベテランと中堅、若手がバランスよく配置された現場の絶対数こそそんなに変わってないものの、それ以外の深夜アニメなどが題材的なことや予算の関係もあってか、若手ばかりの現場がかなり多くなってきていて、それはイケメンや乙女系アプリゲームを原作とする作品の流行といった時代の必然みたいなものもあるのでしょうけど、その分若手のサークル化といった懸念も感じないではないですね。たとえば20代の女の子ばかりの現場に、僕らみたいな男の声優 が何も知らずに入っていって「……え!?」みたいな(笑)。
平野 あとは現場で私などが「もっとこうしたほうがいいのでは……」とか思っていても、監督さんからOKが出れば、それはもう口を出すべきではありませんしね。
岩田 何も言えませんよね。
平野 これも『うる星やつら』のときですけど、録り直しとかで私が前に立ってやると、杉山佳寿子さんや神谷明さんたちベテランの方々が後ろから「演技部OK」っておっしゃるんですよ(笑)。つまり声優 からみるとと今の演技はOKだけど、どうですか監督さん?と、そういうのも楽しかったんですよ。
岩田 「演技部OK」的なワード、僕も現場で先輩方から聞いた覚えがあります!「いや、今のは良いだろ?」「俺もそう思うなあ」みたいな(笑)。
平野 もちろん最終的にはガラスの向こう側の監督さんの判断に委ねるわけですけど、そういったみんなで 演技をやってるんだという劇団的な楽しさは当時は確かにありました。ただ、今も私とかがマイクに立つと後ろの若い子たちの視線は確実に感じます。あ、ちゃんと見てくれているな、聞いてくれているなって。そのあたり、どんどん盗んでいってもらいたいなと思いますね。
岩田 若手アニメーターもベテランからどんどん盗んでいってください(笑)。いずれにしましても、上映会当日に若手アニメーターのみなさんとお会いできるのが楽しみですね。もちろん作品そのものから描きた いことは伝わってくると期待していますけど、照れることなく壇上でトークしてください。僕らもアットホームに、会場のみなさんともども楽しく場を盛り上げていきたいと思っていますので!
平野 壇上に上がった若手の方々にいっぱいおしゃべりしていただきたいんです。どんな意気込みで作品に臨んだか、製作過程で知らないこともいっぱい教わったと思うので、意外だったことや新しく吸収できたことなどを聞いてみたいですね。私たちは普段作品を見ることしかできないので、その分裏話ですとか事件とかもステージの上でぜひ披露していただけたら嬉しく思います。私たちもいっぱいマイクを 向けられるよう頑張りますので!
プロフィール 岩田光央 所属:株式会社青二プロダクション <代表作>: 『AKIRA ~アキラ~』(金田) 『トリコ』(サニー) 『ドラゴンボール超』(シャンパ) 『ONE PIECE』(イワンコフ)
『どうぶつの森』(カッペイ)『ふたりはプリキュア Splash☆Star』(ドロドロン) 『ピーター・パン』(ピーター・パン) |
プロフィール 平野文 所属:株式会社青二プロダクション <代表作>: 『うる星やつら』(ラム) 『名探偵コナン』(若狭留美) 『ONE PIECE』(マザー・カルメル) 『アニメ三銃士』(ミレディ) 『プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』(マアム:ユメタの母) 『ノンタンといっしょ』(ナレーション) 『平成教育委員会』(出題ナレーション) |