平成22年より開始し、初年度は「プロジェクトA」、次いで「アニメミライ」、「あにめたまご」というネーミングで実施されてきた「若手アニメーター等人材育成事業」。
過去に若手アニメーターとして参加し、現在もアニメーターとして活躍している方のインタビューを行いました。
僕はそれまでZEXCSの動画マンとして3年半くらいやっていたのですが、あるとき「原画やる?」って聞かれて「はい、やります!」と。正直、そのときは単純に原画をやらせていただけることが嬉しかったですね。実際、そろそろ原画のほうへ上がっていかなければいけないし、そうでなければ進退を考えたほうがいいかもしれない。そう思い始めていた時期でもありました。
《アニメミライ》は通常のシステムとは違い、上の人から現場でちゃんと教えてもらえたというのが、やはり自分の中では大きかったです。普通は聞かないと教えてもらえないですし、特にアニメーション業界は職人気質の人が多いですからね(笑)。
原画に関しても一から指導してもらうことばかりでしたが、監督の吉原達矢さんはフィーリング的に「ここはもうちょっとガーッと」「ここはもっと遊んで」みたいな感じで、一方で作画監督の土屋圭さんは直接紙に描きながら「ここからここまで人が来ると、このくらいの大きさになる」みたいな具体的な指導でした。僕としてはどちらの指導も大変ありがたかったですね。
現場では1カットにつき1、2回はリテイクが返ってくる感じではありましたが、それはみんなそうだったように思います。また僕はキャラクターだけではなく、煙とか水とか炎などのエフェクト・アニメが多かったのですが、物理法則の捉え方からどういうフォルムにするのかとかは人それぞれではあれ、教えること自体難しいものもあると思います。でも吉原さんはその手のものがお得意な方でしたので、「どういう風にすればかっこよくなりますかね」なんて聞きながらやらせていただいていました。
月に1回の講習は井上俊之さんや小林七郎さんなど、レジェンド・クラスの方々のお話がとても面白くて、こういう機会がもっとあるといいなと思いました。また、僕たちの年は、一泊二日の合宿もあったんですよ。そこで他のスタジオの人たちとも一晩飲みながら、ワイワイ楽しくやらせていただきました。現在《あにめたまご》に携わっている若手アニメーターの人たちには、もし仲間を1人でも見つけたなら絶対に手放すなと言いたいです。
《アニメミライ》の規定に準じて、あれくらいの期間であれくらいのカット数を描くというのは、僕は理想的に思えました。全部こういう風になればいいのになと。まあ、現実は『アルヴ・レズル』が終わってすぐに『悪の華』(13)の原画に入りまして、これがまたものすごく大変だったものですから、実はそちらの記憶の方がより強く残ってるんです。本当にあれは特殊な作品で、個人的には《アニメミライ》で培ったものが0になってしまうかも!という感じすらしました(笑)。でも、そういったものもまた一つの経験として、糧にはなっているのかな。
現在《あにめたまご》に携わっている若手アニメーターの人たちには、もし仲間を1人でも見つけたなら絶対に手放すなと言いたいです。
今は演出の仕事をやらせていただいていますが、あのとき《アニメミライ》をやらせていただいたことが、自分にとって本当に大きな転機になったと思っています。《あにめたまご》に携わる若手アニメーターの人たちも、ぜひそうなるように祈っています。
現在、私はフリーなのですが、当時はスタジオディーンに所属していまして、キャリアとしても2年か3年目になるかといったところでした。仕事もまだ動画検査の段階で、原画をやったことはなかったのですが、会社のほうから《アニメミライ2015》をやってみないかと言われて、原画を教えてもらえるまたとない機会だと思って参加させていただきました。
まず講習が楽しかったですね。普段はひとりで机に向かって黙々と作業していますし、社内でも受け身では何も教えてもらえないので、ああいったお勉強会みたいなものがすごく新鮮でした。教えてくださる先生も雲の上の存在のような方々ばかりでしたし。
『音楽少女』はもともとスタジオディーンがキャラクター・デザインしたキャラソンCDシリーズを原作にしたもので、最初はみんな「キャラクター可愛いし、いいんじゃない?」みたいな軽いノリだったのですが、次第にそれが非常に"挑戦的”な作品であることがわかってきて(笑)。
作業時間が朝から夕方までといった就業規則は、最初は良かったですけど、だんだんスケジュールが厳しくなるにつれて足かせになるというか、それを遵守するのが大変でしたし、すべての作業を終えたときも、ただ「間に合った!」という感慨だけでした(笑)。
初めてやらせていただいた原画の仕事ということで、やはり自分の力量不足もあって大変ではありましたが、作監さんから忙しい中でいろいろ指導していただき、また紙の端っこの方にさりげなく褒めてくださるコメントが記されていたりして、とても嬉しかったですね。リテイクも多かったですけど、そのつどちゃんと理由などを教えていただけたので、どこが描けてないのかなど、こちらも理解しながら作業を続けていくことができましたし、最終的には自分の中で納得のいく原画ができたと思っています。
私自身は《アニメミライ》ということで、念願の原画をやらせていただいたという歓び以外、当時は特に今までと何が違うといった感覚はありませんでした。でも、今振り返りますと、やはりやって良かったなと思っています。《アニメミライ》がなければ、あのとき私は原画をやれなかったわけですし、『音楽少女』も可愛い作品に仕上がりましたし、すべてのスタートになった感じがしています。
当時いろいろ教えていただいたことを今でも思い出しながら原画などの仕事をやらせていただいていますが、『音楽少女』のような日常系の可愛い動きではなく、アクションものとかになると応用が利かないので苦労したりもしています。監督とのコミュニケーションなども含めて、今もやはり勉強の日々ですね。