園崎 「あにめたまご2017」の司会のお話が来たときって、どんなでした?
近藤 自分はこの事業を担当しているプロデューサーから突然連絡がありまして、一体何があったんだろう?って(笑)、まさかこんな壮大な企画だとは!もう純粋に楽しそうだなと思いましたし、自分も微力ながら何かできればいいなと。
園崎 私も実はプロデューサーから連絡がありまして(笑)、以前から「育成事業はとても大変だけど、有意義で楽しいよ」って話を聞かされていたんです。「多くの人にこの事業を知ってもらいたい!アニメ業界を応援してもらいたい!」って。
近藤 本当、熱い人ですよね。
園崎 かなり熱い人ですね(笑)。 私は日本のアニメーションは世界に誇れる文化だと思っていますし、その未来を、国を挙げて支えていくのってとても大切なことだとも思います。特に私たちは、その出来上がった絵に声を入れて、世に出ていくのを見守る立場ですから、突然白羽の矢が立ったときはドキドキしましたが、少なからず興味もありましたので、喜んでお受けすることにしました。
近藤 今回の4作品、もうすべてアフレコも終わって、完成間近とのことですね。それぞれのキービジュアルだけ見ていても、すごく興味をそそられます。
園崎 各作品ともカラーが違いますよね。日本の民話原作もあれば、3DCGのSFもあれば、二頭身キャラも、東北ずん子ちゃんもいる(笑)。
近藤 ほんと、そうですね!
園崎 スタジオさんによってカラーが違いますよね。それぞれのスタジオが育成プランを立てて、若手を育成していたらしいですし。
近藤 今回の若手アニメーターのみなさん、だいたいキャリア3年前後くらいの人が多いようですね。
園崎 声優も3年目って、なにかしら岐路に立たされる時期ではあるんですよ。
近藤 新人の頃って生活も苦しいですしね(苦笑)。当時は死ぬほどバイトやってました。でも、不思議としんどいとか辞めたいとか思ったことがないままにここまで来られたというのは本当にありがたいことだと思っています。僕は声優学校の先生も10年くらいやらせていただいているんですけど、正に駆け出しの人たちと一緒にやらせていただいていると、やはり夢のある世界だなと思います。
園崎 教えるのって、やはり大変?
近藤 大変です!特に最初の頃は悩み悩みって感じでした。生徒さんたちの気質も時代と共に変わってきますし、そのつど接し方も変えていくように心がけています。またみなさん、どうしてもアニメ業界の華やかさに憧れて来られているので、もちろん夢もありますけど、一方での大変なところもちゃんと見せていかなければいけないなと思っています。
園崎 私の新人時代は、ちょうどアナログからデジタルに変わっていく時期だったんですよ。それと、アフレコのとき、どの現場でもちゃんと絵があった(笑)。
近藤 ホント、そうですよね。「あにめたまご」はアフレコのとき、絵がちゃんと入ってなければいけないという規定だそうです。しかもオールカラー。今、絵のある現場ってホント少ないですから。
園崎 今ほとんど現場ではマルセ(口パクの印)を見ながらアフレコすることが当たり前になってますけど、完成された絵を見ながら演技するのって実はものすごく大事なことで、その点、私たちの新人時代はそういった大事な経験が多く出来て、ありがたかったなと思います。
近藤 そう考えると「あにめたまご」はアニメーターだけでなく、若手声優の育成の場にもなってますね。
園崎 また最近、若手は若手だけ、ベテランはベテランだけと、現場が極端に二極化する傾向があって、それでは良くないということで、もっとみんな入り乱れながらやっていこうよという流れも、少しずつですが出始めてきています。やはりベテラン勢のすごさを若手には学んでもらいたいですしね。でも一方で、若手なら若手だけの現場の力による独自の雰囲気というものもあると思うので、一概にどちらがいいとは言えないんですよ。
近藤 若手ならではの新しいスタイルというものもありますしね。
園崎 だから、そういう時代に来ているというのも面白いなあと、正直思っています。
近藤 僕らの新人時代は、まだ現場に若手とベテランの方々が均等にいましたよね。
園崎 そう、だからまず先輩から怒られる。マイクの前になかなかうまく入れないってワタワタしていると「そんなにウロウロしない!」「すみません!」って(笑)。
近藤 今、なかなか見られない光景ですよ。
園崎 でも実は私、この「あにめたまご」に当時のそういった雰囲気を匂わせるものを感じているんです。もちろん声優とアニメーターさんとでは仕事の内容こそ違いますけど、若いアニメーターさんたちが上の人たちに見守られながら作業していくという点でも、私たちが新人だったころのアフレコ現場と同じものがありますよね。
近藤 そのときは気づかなくても、後々の糧になっていくと思いますよ。
園崎 「あにめたまご」はアニメ制作のひとつの理想形だと思うんです。上のOKが出るまで直させられるって、大変ですけどそこで何が求められていたのかがわかる。私も新人時代、先輩たちがいっぱいいらっしゃる中で何テイクやらされたか!
近藤 ありましたねえ(笑)。
園崎 そのうち自分が何しゃべってるのかわからなくなってくる(笑)。
近藤 それこそマイクに移動するときの足音とか、「その靴、音が出るわよ」「歩き方、替えなさい」とか。今はそういうの、なかなかないですけどね。
園崎 私、言っちゃうけどね(笑)。
近藤 でも確かに、教えていただけるから直せるというのもありますから、それは大事なことだと思います。
園崎 アニメーションって、私は錬金術だと思っています。実写の場合、SFのような非日常的なものでも、そこにはちゃんと生身の人間がいるわけですけど、アニメーションってまったく何もないところから人の人生を作り上げていくわけで、その過程でさまざまな人の手が入っていく……。
近藤 それってすごいことだと思いますよ。
園崎 日本は独自のスタイルでアニメーションを作り続けてきていると思うんですけど、それがもっともっと盛り上がって発展していってもらいたいんです。
近藤 特に「あにめたまご」は制作スタイルもきちんとコンセプトをもってやっていますし、そのことを知ってすごく有意義な企画だなと俄然思えるようになってきました。若い人たちの熱量って、すごいものがあると思うんですよ。怖いものはないし、夢もあるし、そういう意味でも今回の若手のみなさんが作り上げた作品を見るのが本当に楽しみです。
園崎 イベント当日はこれら4作品を見させていただき、それぞれの作品について若手アニメーターのみなさんと一緒に楽しい時間を共有できたら嬉しく思います。アニメーションの華やかな面ばかりではなく、いろんな役割の人たちがいてこそのアニメーションなんだよってことを、ご覧になられる観客のみなさまにもお伝えしていきたいです。