若手育成講座 第1回2日目
2019.01.25



こんにちは、あにめたまご広報担当Tです。今日はあにめたまご2019若手育成講座第1回2日目です。

この日最初の講義は大和田良氏(写真家(協力:株式会社ニコンイメージングジャパン))をお招きした「写真講座」からスタート。写真の講座と聞いて「アニメーターに写真の講座をしても意味ないのでは?」と感じる人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。写真とアニメの原画には共通点が多く、例えばレンズを通して見る景色は原画制作でも大いに参考になります。同じ人物を同じ大きさに映るように写真に撮っても、それが望遠レンズと広角レンズで撮った場合では背景の写り方から異なる。これを知っているだけでも原画や背景を描く際に全然違ってくるのです。

さてその講座はというと、絞りやシャッタースピードなどカメラの基本を学んだ後に、望遠レンズと広角レンズを使い分けて被写体を撮ってみる実地に移行。若手アニメーターたちは実際に写真を撮ってみることで、望遠と広角の差を感覚で掴んでいきます。




こうして望遠と広角の画角の違いを肌で感じた若手アニメーターたちは、続けて構図の考え方を学んでいきます。構図とは簡単に言ってしまえば喜怒哀楽を暗示させる見せ方。人物の視線の方向であったり、オブジェクトの配置(バランス)を利用して主題(伝えたいこと)を一枚の絵で表現するための必須スキル。そんな構図の具体的な効果の一例を下に記載しておきます。

●線が構図に与える具体的な効果とは?
  • 曲線を用いた構図は見るものに「複雑さや優美さ」を与える
  • 直線を用いる構図は見るものに「力強さや安定感」を与える
  • 三角形を用いる構図は直線と同じように見るものに「力強さとリズム」を与える
  • 斜めの線を用いる構図は見るものに「不安定で不穏な雰囲気」を与える
これは写真だけでなく絵画などでも同じ効果を得られます。

以上を踏まえた若手アニメーターはカメラを手に「1.顔の向きと逆の空間を広く空けて、未来への期待を表す写真を撮る」「2.顔の向きに空間を広く空けて、将来への不安を表す写真を撮る」のふたつの課題に沿った写真を撮りに街へと繰り出します。こうして1時間ほど写真を撮り終えて戻ってくると待っていたのは大和田氏による講評タイム。自分たちの写真の「いい点」と「改善点」を知ることによって、その知識が原画にも活かされるでしょう。






2限目の講座はアニメーターの稲村武志氏を迎えた「表現について学ぶ講座」。この講座では、見た人に伝わるとはどういうことか、単純な絵で単純な動きを作ってみて、それが他者に自分の意図したように伝わるかどうかを確認し、その中で、自分が感じていることと他の人の感じ方の共通範囲を再認識して、アニメーションとしての表現に生かす、ということを学びました。





後は「今だからこそやるべき13のトレーニング」の課題として出題されていた「職場で食事をしている絵」の講評会が開かれました。講評会は瀬谷委員長から「3Dの人は普段絵を紙に描く機会がないと思います。それでも皆さんが頭の中にどんな構図を思い浮かべて、何を伝えたくて描いたのかを見てみたい。絵の上手い下手ではないんです」と主旨を説明。続けて「ここにいる皆さんがどう伸びていくのかを見てみたい」と言葉をつなぎます。

講評は瀬谷委員長、竹内副委員長、稲村氏の3名が担当。稲村氏から「今の時代、写真をトレースすれば絵は描けます。だけど僕らアニメーターは現実にもないものを描かないとならないこともある。その時が来た時に焦らないように、自信が持てない絵は今から練習しておいてください」と、アドバイスが送られると若手アニメーターたちは頷きながらメモを取る手を動かしていました。





今回の課題絵は「食事の場面」ということで稲村氏は「箸の持ち方」について注目していたそう。「箸でご飯を口に運ぶ時、皆さんの手の甲はどこを向いていますか? 実際にやってみてください。きっと下を向いているはずですよね? これがうどんなどの麺類の場合は横を向いているんです。食べ物によって違いがありますので、しっかりと観察してください」とアドバイスを送っていたのが印象的でした。

こうして2日目の講座も無事終了。最後の「今だからこそやるべき13のトレーニング」の講評で感じたことですが、4団体が参加する今回のあにめたまごで内2団体が「3DCGアニメーション」での制作ということだったのですが、「手書きアニメーション」との差異はほとんど感じないほどのレベルに驚きました。しかも今回のトレーニング課題は本講座受講前の作品。これから若手育成講座を経てどのように若手アニメーターたちが成長していくか、それが楽しみでなりません!