あにめたまご2018「若手育成講座Ⅲ」
2017.11.24


こんにちは、あにめたまご広報担当Tです! 「あにめたまご2018」若手育成講座も今回がいよいよ最終回となりました。最後の講座の模様をお届けいたします。

1コマ目となる午前の講座では、社会人として必要な知識「税金」の講座が設けられ、講師に税理士の田子周一氏を迎えて青色申告書の作成方法などを学んでいきます。講座用に準備されたたくさんの領収書サンプルをその種別ごとに仕分けし、平成28年度の申告書作成の要項に則って若手アニメーターたちは確定申告書を作成。ここでは若手アニメーターたちだけでなく、彼らが所属する会社のスタッフや講師陣も一緒になって申告書を作成している姿が印象的でした。さらに講義終了後の質疑応答もこれまでになく活発に行われました。知らないとせっかくの還付金も受け取れない所得税の申告。社会に出てからなかなか学ぶ機会もありませんので、この機会にしっかりと覚えて欲しいです。

続けて、「13のトレーニング」の講評が人材育成委員からありました。これまでの課題を通じて若手アニメーターの大半が、成長の実感、手応えを感じているようでした。提出された絵を見ても「この課題は何を要求しているのか?」を考えて描かれた絵が多くなったような気がします。しかし、技術的にはまだまだ及第点とはいかず「我々に求められているのは商業アニメーターとしての絵です。お客さんが理解できるような絵を描かなければいけません。
学校の美術とは違う商品としての絵を描くための訓練、それがこの課題ということを忘れないでください」と厳しい言葉も飛んでいました。特にパースは自分のものにしている参加者が少ないとのことで、前回の講座にあった「広角と望遠の違い」の突発的再講義も設けられたほど。正確な絵を描くことの大切さと難しさを、この時間で改めて知ってもらえたことでしょう。


午後の講座は「2Dアニメーション会社の実例」。株式会社シグナル・エムディ アニメーションのプロデューサー本多史典氏に登壇いただき、デジタル作画でのアニメーション制作を紹介してもらいました。なぜ作画のデジタル化を進めるのかという根本的な部分では、「効率化(作業の自動化)の実現」「AI利用の可能性」「新しい賃金体系の模索」「新しい表現の追求」「特定の材料に依存しない」などいくつかの狙いが紹介され、デジタル作画のメリットだけでなくデメリットも語られました。

<デジタル作画のメリット>
・遠方とのスピーディで安価な素材のやり取りが可能
・素材が破損した場合の復旧が紙と比べて容易
・輸送コストの軽減
・紙からデジタルデータへの変換工程が不要になる

<デジタル作画のデメリット>
・機材が高価
・ある程度のデジタル知識が必要
・習熟に紙と鉛筆より時間がかかる
・現物として把握しにくい
さらに本多氏は「会社が欲しいアニメーターはただ絵が上手いだけではなく、コンテの要求を満たしたレイアウトと芝居が描ける、手が早い、設定をちゃんと見て自分の癖で描かない、クオリティーを担保した上でスケジュールを守る、集団作業が出来る、仕事や社内の注意事項などのルールを守る、デジタル知識をある程度持っている人」と語っていました。

もちろん全部を満たす若者は少ないと思います。しかし、これからアニメーターを目指している人には参考になる意見だったと思います。ちなみに成長するアニメーターの特徴は、謙虚、勉強家、情熱的、楽しんでいる、制作との信頼関係を築けている人に多いそうですよ。

続いては、株式会社トムスエンタテインメント(知財管理部長)・笹平直敬氏の「著作権講座」。前半は「著作権とは何か?」から始まって、「著作物とは」「著作権の内容」「(C)表記について」などの説明がありました。
後半は身近な事例を採り挙げ、「このようなケースは著作権侵害となりうるのか」などと受講者に問いかける、ケーススタディー方式で行われました。指名された若手アニメーターたちは、自分の考えを述べ活発なやり取りが見受けられました。
最後に笹平氏は「皆さんには自分の著作物を大切にするとともに、他者の著作物をも大切にし、そしてアニメ業界の根幹を支えるアニメーターとしての矜持を持って恥ずべき行為はしないでほしい。」との言葉を残してくれました。これにより若手アニメーターたちは著作権リテラシーというものを学ぶとともに、他者の権利をしっかりと認めリスペクトする気持ちの大切さを改めて心に刻み込んだことでしょう。


今回のあにめたまご2018に参加する若手の半分が3DCGでのアニメーション制作会社に所属するとあって、最後の授業は「3DCGと日本のアニメーションの将来展望」と題してヒアリング委員の今川洋尚氏を講師に迎えた「3DCG講座」が設けられました。

今川氏は「Love70」というワードを挙げ「美人を撮るなら70mm以上のレンズを使おう!」と具体例を交えつつ人物の見え方を紹介。レンズのサイズでモデルや車の見え方が違ってくるのを目の当たりにした参加者は、一目でレンズの大切さがわかったことでしょう。
続けてモデリングに関しての問題提起や、3DCGの誤解、3次元+時間=4次元の解釈への疑問など、やや専門的な話が進みます。3Dアニメーターたちは目を輝かせて話に聞き入っていましたが「もしかすると2Dアニメーターたちにとってはチンプンカンプンな話だったのでは?」と、不安も抱きました。しかし、そんな心配は杞憂でした。質問時間で真っ先に手を挙げたのは2Dアニメーター。「今日の講義を聞いて、3Dに興味が湧いてきたのですが、何から始めるのがいいか教えてください」と前向きな質問に、新たな才能がすくすくと育っていることを実感しました。第一回目の講座では見られなかった積極性が、今回の講座には確かに存在していました。




最後は講座の完遂を記念して集合写真の撮影。これで3回、計5日にわたるあにめたまご2018若手育成講座の全日程が終了しました。ここで得た知識と積極性は、今からの作品制作の中で必ず開花することでしょう。

さて、これにて5回にわたってお届けしてきたあにめたまご2018若手育成講座レポートも終了となります。

来年3月に行なわれる完成披露上映会には、ぜひ彼らの活躍を見に会場に足を運んでいただきたいと思います。
それでは皆さん、また3月の上映会でお会いしましょう!