スペシャルインタビュー

特別上映会 総合司会 津田健次郎&岡本ナミ スペシャルインタビュー

sit_02

津田 このたび、私たちふたりが《あにめたまご2016》の司会を務めさせていただくことになり、なかなか緊張しています。新人若手アニメーターの方々の想いがたくさんこもった作品をお披露目する場ですので、その想いをいかに拾っていけばいいのか。あと、きちっとした場でもありますので(笑)、頑張らなければと思います。

岡本 まずは、若手アニメーターのみなさんに楽しんでいただけたらいいなと思っています。1本のアニメを完成させるのはものすごく大変なことではありますけど、それが形になったときの喜びもまたひとしおだと思うんですよ。私自身、初めてアニメに出させてもらい、それがオンエアされたときの喜びとか、初のCDドラマの完パケをいただいたときもすごく嬉しかったんですね。そんな喜びを今回は共に分かち合いたいです。

津田 これからのアニメーターさんたちという点でも、楽しみですよね。

岡本ナミ

岡本 ええ、また今回の喜びをもって、それが次に繋げられるようなイベントにできたら嬉しいです。

津田 業界全体で新人さんを発掘し、育て、アニメ全体を盛り上げていこうという、そのコンセプト自体が素晴らしいと思っています。今後のアニメを支えていくのはこれからの若い世代ですからね。しかも《あにめたまご》という形でクローズアップしていこうというのは、素敵な企画だなあと。どの業界でもそうでしょうけど、新人の頃って当然ながらとてもきついもので(笑)、しかもプロとして一生やっていこうとなると、「1回は地獄を見ましょう(笑)」というところから始まるものだと思います。

岡本 津田さん、地獄をご覧になったのですか?(笑)

sit_04

津田 地獄の20代でしたよ!(笑)本当にきつかったですね。ただ、何がきついって、貧しいとかそういうのは覚悟していたのでそれ自体は我慢もできる、ただ自分が世の中に必要とされているのか? といった自分という存在の意義、評価どころか見てもらうことも当時は難しかったので。そこが精神的に一番きついんですよね。でも、だからこそ《あにめたまご》は「ちゃんと見ているからね」と、若いみなさんの仕事に光を当て、しかも面白ければちゃんと評価していこうという、厳しい目も含めて温かくあってほしいと願います。

岡本 その意味では、新人若手のみなさんを集めて作品を作り、みんなに見てもらう機会があること自体、すごくうらやましく思います。私たちの頃はそういうものはなかったし(笑)、そう考えると贅沢なイベントであるとも言えますが、こういうことはどんどんやっていただきたいですね。津田さんがおっしゃったように、何よりも見てもらえて、そこで褒められても駄目出しされても、とにかくそこに自分がいるんだという存在意義を感じられますので。

津田 岡本さんは、新人の頃は?(笑)

sit_09

岡本 私の新人の頃は……フフフ(笑)。当時は作品に出る出ないの次元ではなく、とにかく事務所に自分をアピールするところから始まっていましたし、でもようやく「オーディション受けてみる?」みたいな感じになって、それでもなかなか引っかからなくて、結局はバイト三昧(笑)。

津田 そんなものですよね、みんな(笑)。

岡本 そういう意味では、私もつらかったかな。でも実際はそればかりではなくて、やはりつらかった分、いざ受かったときの嬉しさとかは堪らないものがありましたよね。

津田 そうですね。きついことをただ嘆くだけではなく、何とか結果を残しながら世に出ていこうと臨み続けることに大きな意味があるわけで、《あにめたまご》も今の若いみなさんにきちんと光を当てていこうという意欲が通じて、アニメーターだけでなく他の分野の新人さんたちにも「自分たちも頑張ろう!」とテンション上げてもらえたら嬉しいですね。

岡本 そういえば《あにめたまご》の作品は、画が全て上がってからアフレコするんですって!(※今回は『カラフル忍者いろまき』のみプレスコでした)

津田健次郎

津田 それはいいですね。もちろん、どのような状況下でも僕らはしっかりやっていかなくてはいけないわけですけど、やはりクオリティが高ければ高いほどこちらのテンションも上がるとでもいうか、逆に画がすべて上がっていると緊張感が走り、役者として自然とモチベーションが上がります。

岡本 テンションは確実に上がりますよね。線画ではなく色まで100パーセント入ったものだと、こちらも負けてられない! と思いますし、表情とかも細かいところまで見られますので、芝居する方向性も見極められやすくなります。

津田 本当は全てのアフレコがそうあってほしい!(笑)でも、その点でも贅沢な企画ですね。また今回の4作品、全部毛色が違っていて、今のテレビアニメにはない雰囲気のものばかり集められています。

岡本 そうなんですよ。それぞれどんな仕上がりになるのか、とても楽しみです。でも、画のタッチもそれぞれ違うし、どれも描くのが大変そう。

津田 今の若い世代は良くも悪くも“薄い”というか、それは我々の“濃い”先輩方と比較してしまうせいもあるのですが(笑)、一方で最近は作られる作品も濃いものが求められていない気がします。でも《あにめたまご》の作品はどこか濃いというか個性豊かで、今後こういったものが増えていけば、それに応じてクセのある濃い新人さんも増えていくというか「君はさわやかな作品は似合わないけど、ドロドロしたものならいけそうだね」とか(笑)。またそういったところからも可能性はどんどん開けていく気がするんですよ。

sit_06

岡本 インドやインドネシアに赴いて、講師として現地の声優志望の若者たちを教えたとき、彼らは本当にアニメが好きで、体験アフレコのときも目がキラッキラッしてるんですよ(笑)。また、日本の子たちはそういうときになかなか前に出たがらないのですが、彼らは積極的にやりたがるんです。びっくりしたのがいざアフレコのとき、「地元の言葉でも、英語でもいいよ」と言ったのですが、8割くらいの子は日本語でやったんですよ。「どこで覚えたの?」と聞いたら、みんな「日本のアニメを見て覚えました」と答えたので、もうびっくりでした。好きなものに対しての探求心が、本当にすごく強いんだなあと。

津田 声優に限らず、いずれはそういったアジアの人材がどんどん世に出てくるでしょうね。日本のアニメも海外に食われかねないですよね。一方で実写とアニメの垣根もなくなってきているし、アマチュアも含めて作品を作りやすい環境になってきている分、面白くも怖い時代になってきたと思います。でも、そんな時代だからこそ「プロにしかできないものもあるんだぜ!」というところが明確になっていかないと、どんどん淘汰されていくでしょうね。

岡本 プロとしての誇りは持ち続けていきたいものです。

sit_10

津田 その意味でも《あにめたまご》はプロになってまもない人たちの夢と可能性にあふれたイベントですし、ソツないものにはしたくないですね。僕らも、普段お会いする機会の少ないアニメーターさんたちと交流できる貴重な場でもありますし、みんなが楽しくやれる手助けができれば、そしてアニメっていいものですねと、いらっしゃった方々の心に残るものにしたいと思います。

岡本 せっかくやるからにはいろんな人に見ていただきたいですものね。こういった大きなイベントに関わらせていただくことに正直プレッシャーもありますけど、来ていただいた方に楽しんでいただけますよう、まずは頑張ります。

津田岡本 いろんな人に見てもらいたい!

津田健次郎 プロフィール

sit_a3アミュレート所属
代表作は『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(海馬瀬人)、『GANGSTA.』(ニコラス・ブラウン)、『ブブキ・ブランキ』(的場井周作)、『ジョーカー・ゲーム』(蒲生次郎)、『TIGER & BUNNY』(ファイヤー・エンブレム/ネイサン・シーモア)、『K』(周防尊)、『薄桜鬼』(風間千景)、『テニスの王子様』(乾貞治)、吹き替えでは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(カイロ・レン/アダム・ドライバー)、『スーパーナチュラル』(カスティエル/ミーシャ・コリンズ)など。

岡本ナミ プロフィール

sit_prof_okamuraアクロス エンタテインメント所属
主な出演作は『犬夜叉』(あゆみ)、『こばと。』(奈緒美)、『たまごっち!』(ひめっち、くのいっち、ぷちべりっち)、講師として「独立行政法人 国際交流基金 平成24年度日本文化紹介派遣事業 アニメ・マンガ『宇宙兄弟』に関するレクチャー・声優ワークショップ(インドネシア)」、「独立行政法人 国際交流基金デリー支部 声優ワークショップ(インド)」など。

ページ先頭へ